ニホンミツバチの保護飼育 佐々木 伸一

トップページ > 蜂についての解説 一覧 > 2020.10.25 オオスズメバチ 001番

2020.10.25 オオスズメバチ 001番

2020.10.25 オオスズメバチ 001番

自分は以前、蜂駆除の仕事をしていました。

画像はキイロスズメバチの巣です。

駆除依頼の多くはスズメバチの巣の駆除依頼でした。

ちゃんと数えてはいませんが、年間90から200件、多い年は250件近く駆除をこなしてたと思うので、
実働8年間でそれなりの経験を積んだと思います。

駆除の多くは住人のおられる住宅のスズメバチの巣駆除の依頼ですが、時折、空家や公共の施設や橋梁、災害現場等での蜂の駆除依頼もありました。

駆除の基本は『付近住人の方々の安全確保』で、その為に様々な施策、手段、はたまた普段は滅多に使わない駆除の裏技使用もありました。

安全確保とは、基本的には施策の重ね掛けの事で、

万が一想定を超えて蜂が動いた場合の為や、

この手順をもしもミスった時でもここで蜂は止められる、

というような時の為の施策で、

これを真面目に二重三重に実施してますと手間とお金と時間ばかりかかってたいへんでした。

各種の蜂の習性や特性を知らない方からすれば奇異に見える行動や策の重ね作業だったのかもしれませんね。

自分の駆除の基本は
「スッと行って、グサッと刺す」
です。

それは、夜間にスズメバチ達が巣に戻って安心して休んでいる所へ気配をころして接近し、

気づかれないうちにまとめて逃がさず駆除するという事です。

そして戻り蜂(当夜巣に居らず、翌日などに帰宅してくる働き蜂の事)をうろつかせずに巣に誘引(巣が残っていれば当然うろつく事無く巣に入るので)し駆除し、

付近住人の安全を確保する為に駆除後の巣を戻り蜂誘引の罠に利用する為に残す場合が多かったです。

その場合、多くの人が心配するのは巣が残ってると駆除後もスズメバチが活動続けたり、別のスズメバチが再利用するのではないかという事ですが、

適切な駆除をしていればその様な事は無いです。(しかし中途半端な駆除や女王蜂を取り逃がしてたりすると、その限りではありません)

スズメバチ自身が、古巣を再利用する事はありません。

同じ場所にスズメバチが巣をつくる事はありますが、
その場合も古巣を破壊しながら自分達の巣を拡大していくので、

スズメバチからしたら古巣は障害物となり、スズメバチの巣造りを妨害してくれるのです。

 

大きな巣をつくる事で有名なキイロスズメバチは実は夜に睡眠を取ることは無く巣の中で休んでるだけなので、

夜とは言えど、ミスして音や振動をたてたりと下手な事をすれば一気に大量の働き蜂が巣から溢れ出て来て襲いかかってきます。

そんな時の為の防護服なのですが、

自分もスズメバチ用の防護服は所有してはいますが、

防護服を着るのは、足場が悪くて蜂が来ても対応が出来ないのが予想される現場などだけしか着用しませんでした。

防護服を着用してると、

蜂の音や巣の幼虫の音、

ハチの気配を感じるのに邪魔だし、

必要な時素早く動けないし、

何より手先の細かい作業が防護服の手袋では上手く出来なくなるので、

全体の七割ぐらいの現場では防護服着ること無く駆除実施してました。

特に天井裏に入る時は「音」「気配」「退路確保しながら進み、必要な時に、体重をかけられる僅かな場所を選んで素早く移動」が重要なので、

まず防護服を着ることはありませんでした。(現場によって様々な例外はありました)

防護服を着用しないでスズメバチに襲われると当然刺されます。

スズメバチの毒針で刺されると痛いので(天井裏の中ではスズメバチ来ても基本的に回避行動はとれません。そうならないようハチの動きを予測して事前に退避行動をとるのは基本です)、

反撃のスズメバチに巣から飛び立たせる事無く駆除するのが上出来で、

スズメバチに自由に飛び回らせたり、取り逃がしたりするのはよくないと自分は考えてました。

 

駆除の時、住人の方々が家にいても気付かない位にスズメバチに何もさせず、ハチを巣の中で駆除するのが理想なんです。

スズメバチが飛び回るということは、誰かが襲われる危険な可能性が飛び回ってるという事なのです。

駆除の事前説明は当然するのですが、
苦労して施策を組み上げて理想に近い駆除を行った時、羽音がしないので「本当に駆除やったんかいな」と言われた事もありました。

深夜に危険な作業を一生懸命やってクタクタに疲れて終えた時に言われた言葉はなかなか忘れないで覚えているものですね。

そんなこんなでスズメバチ駆除の実際の様子の一部を書き記してみましたが、鋭い方は気がつかれてると思います。

視力の事です。

もちろん目が良い事に越した事はありません。

既にハチを怒らせてしまってる現場を駆除依頼され、乱戦や接近戦をせざるをえない時、

蜂の羽音、

蜂の体の捻りや、

ダッシュ前の「ため」など音や、

気配で拾いにくい情報は、

視力が良ければコンマ何秒早く気付けて、その分早く体重移動や回避移動先の確認に時間を使えます。

体重を半歩早く 移動出来てれば、

上半身を捻れる可動域は大幅にマシになり主導権の維持にもつながります。

なのですが自分は視力は0.8程度で免許証の更新の時には毎回車用の眼鏡持参してる位です。

色々工夫してスズメバチ駆除に支障無いように取り組んでましたが、

駆除に呼ばれて巣の位置の最初の確認(基本巣の遠方から指さしで教えてもらうようにしてました)や、

羽音を消して飛ぶスズメバチや気配を消してるスズメバチ(スズメバチは相当賢いんです)の発見は、

聴覚と気配感知に頼る部分の多かった自分は「目が良かったらなぁ」と思う事が時折ありました。

そんな視力に自信の無い自分なので、

蜂の生態や習性を観察し意欲的に学習し、

自分の中で「徹底的に考え抜いたスズメバチへの対応のルール」を自分に課して、

それを常に守るよう心掛けた事が多くの蜂の巣駆除をこなして来れた要因の1つかと思ってます。

ページトップへ戻る
Copyright(C) ニホンミツバチの保護飼育. All Rights Reserved.