ニホンミツバチ保護飼育 佐々木 伸一

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2020.08.15 二ホンミツバチ 010番

2020.08.15 二ホンミツバチ 010番

前回、分蜂群偵察蜂が好んで通る場所、行かない場所のお話をしました。

今回は偵察蜂に見つけてもらった後の話です。

先ずは当然ながら安全なのかどうかです。
不安定に揺れる場所、
浸水しやすい場所、
交通量の多く振動続く場所、
騒がしい場所など、
偵察蜂が危険を感じれば当然目的地候補から外されてしまいます。
しかし絶対では無く、
たまにそういう難儀な場所に営巣してるのを見かけるので完全に駄目な条件ではなさそうなのですが、
静かに子育てしたいのは人間もニホンミツバチも同じなようで、
分蜂群待ち箱は、落ち着いた場所に置くのが無難だと言えます。

そして気をつけたいのが匂いです。

西洋蜜蜂(セイヨウミツバチ)の資料によると、
セイヨウミツバチ働き蜂は犬を上回る敏感な臭覚を持ちつといいます。
実際に欧州(ヨーロッパ)では訓練をした西洋蜜蜂の働き蜂を使い人間の初期ガンの匂いを呼気から嗅ぎ分けさせ、
ガンの早期発見に医療目的で実際に使われているそうです。

ニホンミツバチも同様に匂いを嗅ぎ分ける能力が高く、
江戸時代の書物などにも悪臭を嫌う旨の記述があったりします。

ヘドロの臭いなど人間が悪臭と感じるにおいはミツバチも嫌がると考えていけばいいと思います。
埋め立て地などは意外と要注意ですね。(うちの庭は埋め立て地で、実は一鍬((ひとくわ))掘るととても残念な臭いがします)

風通しの良い場所で木陰などであればそんなに気にする事もない現場環境チェックですが、心に留め置くと良い判断ができると思います。

ただ、分蜂群側の方も厳選に厳選を重ねたいのは、
これから自分達の人生というか運命を左右する住居選びな訳ですから当然なのですが、
実はそうも言ってられない事情があったりもします。

それは分蜂群側にも他の分蜂群との良い場所の取り合い(分蜂の季節は地域ごとにほぼ一緒)という競争があり、正直焦りがある事と、
更に切実なのがタイムリミットがある点です。

そのタイムリミットとは分蜂群が元の巣から持ち出してきたお弁当で、つまり食料問題です。食料が尽きれば当然餓死してしまいます。

その弁当とは働き蜂達の「蜜胃」に貯めた蜜の事です。
「蜜胃」とは、通常の胃袋の手前にある花の蜜等を運ぶ為に入れる専用の胃袋の事で、
分蜂の際には、働き蜂各自がそれぞれにこの「蜜胃」に目一杯貯蜜を入れ旅立つのです。


おっきな(蜂数の多い)分蜂群が巣箱に入ったなーと思いながら飼育設置場所への移動の為に持ち上げると、蜂数の割には驚く程軽い事が時折あります。

そんな時よく見ると、働き蜂達は痩せ細り、
お腹が空きすぎてお腹の黄色と黒のシマシマ模様の所が縮んで黄色が見えなくなり黒黒模様となった可哀想な様子となってます。

飢餓状態となれば当然全滅の危機となりますので、
持ったとき驚く程軽かった時は、
ギリギリまで山野をさまよい、
飢餓寸前で滑り込みセーフで入ってきたんだなーと思ったりします。


そういう切羽詰まった時は条件選択も緩くなるので、
変な所に営巣してるニホンミツバチ達の巣は焦ってたんだなぁと可哀想に思ったりします。


ただ、多少の悪条件にはものともしないで逞しく生きる力をニホンミツバチは本来持っていて、
洗練された進化の末の強靭な生活システムを持った興味深い生き物なんだと思います。

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